川原で寄り道した二人


希望の土地を探しはじめてずいぶんと経った頃、私たちに我を忘れてしまう出来事が起きた。
なんとなく川の近くもよいかなあ、と八幡町あたりをあたっていたら、川のそばに物件が出ていた。金額的に話にならないほど高い物件だったのだけれども、ついでに見てみようか、と立ち寄った。
すっかり更地になっていて、広瀬川の土手のふもとだった。
土地の後ろ側は、そのまま土手になっていて、土手へのぼるための小さな階段もついていた。
のぼってみると、土手の下は広い河川敷になっていた。その向こうに広瀬川が流れている。その川原では、この時期東北では定番のいも煮会のけむりがところどころ立ち上っている。広瀬川の向こう岸のがけの上には、美術館のレンガ色の建物が見え、右手にはこんもりとした木々が見える。
空は青空。天気は良好。
私たちは、広瀬川に向かって駆け下りた。これほどの景色はない!
二人声を揃えて、「欲しい!」
しかし、価格も予算の倍以上ではないか!建物を含めた予算に近いじゃあないか!
それでも二人はなんとかしたいと思っていた。
家を建てるお金がなくなってしまっても、テントを張って暮らしてもいいじゃないか、とそれほどまで本気で欲しいと思っていた。

あきらかに二人は分別をなくしていた。

前から土地探しを頼んでいる不動産やさんに話をしてみると、駅から歩けるようなところじゃないし、ちょっと高すぎるでしょう。と云われてしまった。確かにはじめに出していた条件より少し不便。
「でも、あの景色がすばらしいんだっ!」
不動産やのSさんは呆れ顔。

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それにしても、高すぎる。宝くじでも当たらない限り無理だ。
それでも、あきらめきれずに、その土地のそばをうろうろ探していた。川の側の土地ばかりに目がいった。
そんなとき、新聞で広瀬町の物件をみつけた。知事公社のすぐ側だった。坂がきつくて、この前みた土地と比べるとイマイチだったが、なんとなく川の側だったので、気になるところだった。

そんなある日曜日、広瀬町の土地へ歩いて行ってみた。
天気はよくて、気持ちの良い秋の日。ふたりでぶらぶら行ってみた。
仙台じゃあ有名な人たちのお屋敷があって、知事さんちがあって、緑が多くて、川も近い。ケヤキ並木の定禅寺通にもすぐで、帰りは県民会館で展示会をみて、ぶらぶら帰ってきた。
こういう生活もいいねー、なんだかのんびりしてきもちがいいねー。となんだかその気になってしまった。

新聞の不動産やに聞いて見たら、広瀬町の土地はもう決まったと言う事だった。


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